K区役所愛情創出室

一路 真実
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 サチコは、はっとした。いつものように画面に向かってデータを書き換えていると、知っている名前が表示されていたからだ。
「遠藤涼太」
 先輩の遠藤であった。
「遠藤さん、彼女いたんだ……」
 サチコは少し残念な気持ちになったが、遠藤の彼女である鷺汐悠里は遠藤と恋愛中にも関わらず、画面上では次の恋愛相手が弾き出されている。つまり、サチコは遠藤と鷺汐を別れさせなければならない。
 この事実を遠藤に伝えるべきか迷った。しかし、通常この業務はサチコ一人で行わなければならない。これまでは前任者ということで隣の婚姻係に異動した遠藤がチェックに入っていたが、本来はサチコ一人で処理し、決裁権を持つ課長が確認するというシステムなのだ。最近は少しずつ遠藤のチェックもなくなり、最終的にサチコが一人で業務を行うことができるように体制が整いつつある。
 腕組みをし、椅子を回転させた。
「遠藤さんと彼女をどうやって別れさせればいいんだろう」
 そう声に出して言ってみたが、実際にはそれで収まるような気持ちだけでないことは薄々感じていた。サチコがどんなミスをしても、矢面に立ち守ってくれる遠藤が気になり始めていたのだ。
 鷺汐が次の相手と出会うまであと一週間。サチコは思い切って、書いてみた。